ミッション


科学の進歩を背景に、ひとは、無限に欲望を増大させ、生き延びる手立てをみつけていく。病との闘いが人類の辿った時間の連なりのなかにある。

なかでも、癌という病気は、人間の暮らしの営みのなかで、長い時間をかけて病んでいき、その最後の壮絶さからか、癌という重い病を突きつけられると、家族もふくめ、そのネガティブなイメージに立ちすくむ。

がんは生物学的な現象にとどまらず、人類学的な出来事である。それぞれのいのちの繋がりがもつ文化の影響を色濃く背負っている。アジアの文化的多様性は、がんの克服のための障害であったりもするが、また生き延びていくための大きな力でもある。アジアのそれぞれの社会の暮らしや人々の意識の違いを私たちは丁寧にひもといていかねばならない。

先進国の病とばかり思われていたこの病が、インド・中国の貧困地帯を中心にして急増しているなか、我々はアジアのがんにどう向き合うのだろう。

近い将来、同じ病を抱えながら、治っていくものと、苦しみもがき死んでいかねばならないもののという、不条理を国際社会は背負いこむ。この重い現実に我々はどう向き合えばいいのだろうか。

国際保健の世界では、エイズマラリアなどの感染症がその主流を占めるが、しかし早晩、途上国支援においても、がんに舵を切らねばならない日がやってくる。そのとき、我々はどう理念をもてばいいのか。アジアのいのちの繋がりのなかで、さまざまの立場から、この問題をじっくりと語りあいたいと思う。

2009年1月

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