人間の安全保障


がんをグローバルヘルスアジェンダにするためには、われわれは今なにをするべきなのか?

感染症は未だに大きな課題ではあるが、世界人口の大きな部分を占める中国・インドの感染症対策の成果などによる年齢構造の推移とともに、がんは途上国においても深刻な状態になりつつある。

しかしながら、がんはグローバルヘルスの中では正当な位置をしめていない。

国際保健はグローバルヘルスと呼ばれるようになり、巨額の資金をバックにするグローバルイニシアティブの乱立の元に、国際社会のアジェンダのひとつとなっている。

グローバル化時代においては、国際保健の問題は、疾病の克服にとどまらず、それに付随する社会経済的要素や、外交上の政治的駆け引きなど、複雑な要因を背負いこんでいる。疾病の撲滅だけをスローガンにして国際連携を謳う時代は過ぎ去り、グローバルヘルスは複雑化の様相を呈する。

そのような中で、現状を対応し迅速に情報の収集分析をする機能が存在しないことも、がんがグローバルヘルスアジェンダとなっていない大きな要因である。

それは、そもそもグローバルヘルスのアジェンダセッテイングはどのようなメカニズムと論理で行われてきたのか。今後どうあるべきなのか? そして、がんをグローバルヘルスアジェンダとするために、何ができるか。

先進国の病として「個」の病気であったがんが、途上国の問題となり、その医療資源・社会資源の格差がjusticeとfarnessの実現を妨げている。

今こそ、いくら金をかけても患者を救うという姿勢ではなく、個人の権利と尊厳に立脚した介護・看護・医療を、資源の限られた中で実現するための施策を作りださなければならない。この目的のために、国際社会への政策提言活動の基礎になるようなアイデアを取りまとめ、今後の提案作成に弾みをつける。

我々は、人間の安全保障という概念に焦点をあて、そのまなざしから、加えて、外交、経済、科学、文化、この5つのカテゴリーから、この問題をとらえなおそうと考える。

2009年1月

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