アジアがんフォーラムとは
世界人権宣言の中にある科学技術の進展を人類は等しく享受する人権をもつという精神のもとに、人類共通の克服課題である「がん」を、アジアのいのちの繋がりのなかで乗り越えることを目指し、3つのCのIntelligenceを集めようと試みています。
- Collective Intelligence
- Contextual Intelligence
- Continuous Intelligence
─ アジアがんフォーラム主宰 ─ 河原 ノリエ
なぜフォーラムなのか?
アジア諸国の状況は急変しており、我が国の互恵的戦略事業に対応するためには、当初掲げた成果とは異なる成果でも状況によって前向きに評価し、近い将来に活かしていく政策提言を産み出す研究として育てていかなければ、研究の実施は困難で国益としての有効性も低下する。
一般に、研究事業の選定課題、および評価委員会の判断基準は明確なデータの出る研究に主眼を置いており、政策的広がりを持つ提言や広範で的の絞ることの難しい智慧の結集を期待することは容易でない。また、国内の研究者はそれぞれの分野の独立した専門家の寄り合い所帯の側面もあり、全体での連携が分断されており、旗艦となる人材の選定が非常に難しい領域でもある。
参加者は医療・研究・産業(医薬品開発)の円環を俯瞰して、医療、アカデミア、官庁、産業界、ジャーナリズムなどこの問題を様々な角度からみることができ、なおかつそれぞれの立場で重い責務を担っている人を人選のポイントとしている。先鋭な国益から距離を置きながらも、「国際医療連携における将来あるべき社会資本の投資と情報構築」のための有機的連携を図るような研究母体を有する意義はあると考える。日本のアジア医療連携において、本事業のような広域フォーラムの果たす役割は、これからさらに大きいと信じる。
方向性
フォーラムは、科学研究がアジア地域で研究する主題として何が可能であり、何が短期的に有用であり、長期的には何がなされる可能性があるかについて、がんの臨床情報と疫学情報という軸を中心とはしつつ、広い範囲での探査活動を行うことで、フォーラムを通じて共有される情報を通じて幾つかの方向性を見つけようとするものである。
本来の科学研究は、より絞った具体的な主題をポリシュし、完成度の高いものにすることが求められるであろうが、標準化が難しく、「ごみデータ」とも巷で揶揄されることの多い、アジアという場で何ができるのか。思いつきでない、しかし独創的な活動を広げていくためには、広い実験野を確保して、その中で多様な目による探査活動をまずやってみようではないか。これが、本フォーラムの大きな目的である。
例えば、情報の共有化のモデルとしてあるネットワーク化のメリット、デメリット、リスクなどについて、議論すること。或いは、集中化した情報機構の存在がどのようなメリットデメリット、リスクを持つかを先のネットワーク化と対置して議論すること。漠然とはしていて、形にはならないが、共有することで方向性を見つけうるような探査活動としてのフォーラムが存在することが、次の具体的なターゲットの攻略を考える際に、大きな力となると考える。
全体の見取り図
アジアがんネットワーク形成必須要素は以下の二つである。
- 相互の必要性
- 正当化する理論
アジアがん情報ネットワーク構想の構築は、2004年から提唱して活動してきており、2007年の安倍・温家宝会談の中で交わされた日中医学構想において、実質的にスタートしたが、その中で蓄積されてきたアジアがんネットワークについての全体構想のマトリックスから述べる。
マトリックとしては、まず現状認識のための、縦横両方の観点がある。 横方向の軸としては 医療・研究・産業(医薬品開発)の円環を俯瞰したアジア人の共有性を生かしたがん研究ツールの開発 民族疫学や 民族ゲノムという水平の広がりを どう捕らえるかアジアという混沌とした広がりの中では大きな課題である。 縦方向の軸としては、二つの方向性について考慮すべきである。
- Top down型 ハイレベルフォーラム「あるべき」姿論 知恵と力
- Bottom up型 臨床と生活習慣に関する情報の収集と流通
- アジアというフィールドで「なにができるか」というFeasibility Study
アジアがんフォーラムは、より正確により早く国際社会における、アジア関連の情報を入手するため、ワシントンDC・ベセスダにある、シンクタンク「Washington Core」に協力をしていただいています。
2009年1月